デシベル(dB)を簡単に理解する方法
デシベル(dB、decibel)という単位を見たことはありますか?
「よくテレビで10デシベルとか言ってるけど意味は知らない」
「大学で定義式を習ったけど何の役に立つの?」
そんなふうに思っているそこのあなた!実はデシベルってそんなに難しくないんです。
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デシベルは桁数を表す単位
結論から言うと、デシベルは常用対数を実社会で使いやすくした単位です。「常用対数って何?」という方でもご安心ください。結局のところ、桁数の多さを表したような量です。どういうことかというと、こんなイメージです。
例として 124.8 dB というデシベルの値の意味を説明します。これは最終的に 3.0×1012 という値を表します。「どういうこと?」と思ったかもしれませんが、一つ一つ説明します。
10の位から左が桁数(指数)を表しています。この例だと指数部は 12 なので \(10^{12}\) を表します。
1の位から右が細かい値(仮数)で、この例だと 4.8 の部分で仮数部を表しています。\(10^{0.48}≒ 3.0\) なので、実際の仮数部は 3.0 です。
これらを組み合わせて 124.8 dB = 3.0×1012 となります。
デシベルの定義式
先にイメージから話してしまったので、ちゃんとした定義を説明します。
ある2個の物理量 \(P_{0}\)、\(P_{1}\) の倍率(比)を \(A=P_{1}/P_{0}\) とします。このとき、これをデシベル単位で表したものを \(G\) [dB] とすると、\(A\) と \(G\) には次の関係が成り立ちます。
$$ G = 10 \log_{10} A$$
逆に、デシベルから倍率を求めるなら、上記の式を A について解けばいいです。
$$ A = 10^{G/10} $$
※ちょっとややこしくなるので説明を省きましたが、デシベル (dB) の前にベル (B) という単位があります。これは単純に A の常用対数を取ったものなのですが、実用的に 10 倍したほうが使いやすいので、1/10 倍を表す SI 接頭辞のデシ(d)をつけたデシベル (dB) が使われています。実際、普段ベル (B) という単位を使うことはめったにないので、この話は雑学程度でいいです。
「ん?ということは、デシベルって倍率を表すものなの?よく音の大きさをデシベルで表したりしてるけど。」
基本的には倍率を表すものだと思って間違いないです。一方、音の大きさなどの絶対的な量をデシベルで表しているのは、各分野で基準となる値を定義し、それとの比をデシベルで表しているからです。
音響分野
音響分野では基準となる音圧 \(P_{0} = 2\times 10^{-5}\) [Pa] が定義されています。対象の音圧を \(P\) [Pa] とすると、音圧レベル \(L\) [dB] は次のように定義されます。注意点として、音圧の2乗の比を取っているので、音圧比だと対数関数の外側は 10 倍ではなく 20 倍になります。
$$ L = 10 \log_{10}\frac{P^{2}}{{P_{0}}^{2}} = 20 \log_{10}\frac{P}{P_{0}} $$
※ちなみに、この基準音圧 2×10-5 Pa というのは人の最小可聴音圧です。
電気分野
電気の分野だと電力を基準にデシベルが定義されます。そのため、電圧のデシベル値は電圧比で2倍になることに注意してください。ある増幅器のゲイン \(G\) [dB] を表すとき、入力の電力 \(P_{in}\)、電圧 \(V_{in}\)、出力の電力 \(P_{out}\)、電圧 \(V_{out}\) とすると、次のようになります。
$$ G = 10 \log_{10}\frac{P_{out}}{P_{in}} = 20 \log_{10}\frac{V_{out}}{V_{in}} $$
式を使わずに理解しよう
では、デシベルを実務で使う時に毎回上記の定義式に当てはめて計算するのかというと、そんなことはありません。現場では計測器を見ながら「3 dB 下げて」とか「50 dB だと少ないな」とか、そんな感じでデシベル単位でやり取りすることが多いです。
デシベルは対数そのものなので、対数の性質がそのまま活きていきます。具体的には、倍率だと掛け算・割り算で表されたものが、デシベルだと足し算・引き算になります。
ではまず、次の表を見てください。倍率が10倍になるたびに、デシベルでは+10ずつ増えます。まさに桁数が10の位に表れていますね。逆に言えば、デシベルの値が 10 違うと桁数レベルで大きさが全然違う値になってしまうということです。
A [倍] | G [dB] |
---|---|
1 (= 100) | 0 |
10 (= 101) | 10 |
100 (=102) | 20 |
1,000 (=103) | 30 |
10,000 (=104) | 40 |
100,000 (=105) | 50 |
1,000,000 (=106) | 60 |
10,000,000 (=107) | 70 |
100,000,000 (=108) | 80 |
1,000,000,000 (=109) | 90 |
次にこちらの表を見てください。今度は1~10の間で見てみましょう。一見規則性がないように見えますが、よく見ると規則性があります。例えば、2 はデシベルで表すと約 3.0 dB です。4 は約 6.0 dB です。2×2=4 ですが、これをデシベルで表すと 3.0+3.0=6.0 [dB] となります。
A [倍] | G [dB] |
---|---|
1 | 0.0000 |
2 | 3.0103 |
3 | 4.7712 |
4 | 6.0206 |
5 | 6.9897 |
6 | 7.7815 |
7 | 8.4510 |
8 | 9.0309 |
9 | 9.5424 |
10 | 10.000 |
ちなみに、上記の表をグラフで表すとこんな感じです。
特に、「3 dB ≒ 2 倍」だけは覚えておいて損はないです。1/2 倍は -3 dB ですので、5 倍は 10 – 3 = 7 [dB] になります。
結論
デシベルはスケールの大きなものから小さなものまで幅広い値を2桁程度の数で表現できる便利な単位です。しかも、その計算は足し算・引き算だけで行うことができ、わざわざ定義式に立ち返って計算する必要はありません。ぜひ使いこなしてくださいね。
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